地震被害調査 平成26年(2014年)長野県神城断層地震

長野県神城断層地震の被災地の皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。

地震概要

(1)本震
発生日時 2014(平成26)年11月22日 22時8分頃
震央 長野県北部(北緯36度41.5分、東経137度53.4分)
地震の規模 マグニチュード 6.7
震源の深さ 約5km
各地の震度
  • 震度6弱
    長野県長野市、小谷村、小川村
  • 震度5強
    長野県白馬村、信濃町
  • 震度5弱
    長野県中野市、大町市
    新潟県糸魚川市、妙高市
(2)余震
発生日時 2014(平成26)年11月22日 22時37分頃
地震の規模 マグニチュード 4.3
最大震度 5弱(小谷村)

出典:内閣府発表 平成26年12月16日 18:00現在

被害の状況

地震動は、長野市、小谷村、小川村で震度6弱、白馬村、信濃町で震度5強が観測され、最大加速度は589ガル(出典:防災科学技術研究所 2014年11月22日)を記録した。
人的被害は死者0名、重軽傷46名。
住家被害は全倒壊は80棟、半倒壊は160棟(出典:長野県ホームページ 2015年1月14日 調べ)となっている。

調査概要

長野県白馬村神城の堀之内地区および三日市場地区を中心に調査を行った。
調査は、主に木造住宅を中心に行った。
地震による建物の被害状況の把握及びその特徴と被害を受けた原因の分析を目的とした。


調査日 2014年11月26日(水)
2014年11月29日(土)
調査地 長野県北安曇郡白馬村神城
(堀之内地区、三日市場地区)
調査者 株式会社インテグラル
(柳澤泰男ほか9名)
調査地の地図

建物倒壊分析マップ

調査結果と考察【2014/12/11】

今回の地震は、震源が糸魚川静岡構造線の活断層の一つである神城断層であることから、長野県により 「長野県神城断層地震」と呼称されている。

地域別による地震被害の傾向

今回の長野県神城断層地震による被害の特徴は、震度5強を観測した白馬村に被害が集中したことである。
全壊あるいは半壊した住宅が長野県内で113棟あり、その内の約40%にあたる44棟が白馬村の被害である。
(2015年1月14日時点では、全壊あるいは半壊した住宅が長野県内で240棟、その内、白馬村の被害は72棟である。
特に、白馬村神城の堀之内地区と三日市場地区に建物の被害が集中している。
堀之内地区と三日市場地区は、徒歩30分で一回りできるほどの広さであるが、倒壊している建物が多く見受けられた。

建物の被害の傾向

竣工年が古い(耐震基準が改正された1981年以前)と思われる建物では、「1階柱(特に隅角部の柱)の折損や外れ」により、その部分が集中的に破壊され、2階の床が傾く状態となっていた。
2階が水平のまま1階を押しつぶすような被害が多かった2007年(平成19年)3月25日の能登半島地震や2007年(平成19年)7月16日の新潟県中越沖地震とは、被害の傾向が異なっていたと言える。
一方で棟数は少なかったが、竣工年が最近(2000年以降に建てられた)と思われる建物には、目立った損傷はほとんど見られなかった。

断層付近の状況

堀之内地区から10kmほど北上した場所にある断層は、断層上の道路が90cmほど隆起するなど、地形のずれがはっきり分かるものであったが、断層から100m付近の建物に倒壊などの目立った被害は見受けられなかった。

考察

同じ白馬村内でも、地域によって建物被害に差が生じた理由としては、それぞれの地域の「地盤」の状態が影響したと考えられる。
一般的に、地盤がやわらかい場合は、地震の振幅や周期は大きくなる。
堀之内地区および三日市場地区では、山間で緩やかに傾斜が続く地形であり、地下水位も浅いと言われている。
地域的に地盤が悪かった可能性があり、そのため、揺れが増大し、建物が倒壊する被害が集中したものと考えられる。
また、竣工年が古い(耐震基準が改正された1981年以前)と思われる建物ほど倒壊している理由としては、その耐震性の低さが考えられる。
法令的には、建築基準法が1981年(昭和56年)に改正され、木造住宅では壁量が約4割増になった。
さらに、2000年(平成12年)の改正で、木造住宅における継手・仕口金物の算定や壁配置のバランスの検討が行なわれるようになった。
倒壊した建物は、外観から恐らく1981年(昭和56年)の建築基準法改正前に建てられたものだと思われる。
そのため、壁量が現行の基準よりも少なく、さらに接合部に金物が使われていない状態であったため、今回のような「1階柱(特に隅角部の柱)の折損・外れ」に繋がったと考えられる。

まとめ

堀之内地区および三日市場地区の竣工年が古い(耐震基準が改正された1981年以前)と思われる建物で多く見られた「1階柱(特に隅角部の柱)の折損・外れ」という被害は、壁量が現行の基準よりも少なく、継手・仕口に金物が使用されていないことが大きく影響したと考えられる。
一方で、竣工年が最近(2000年以降に建てられた)と思われる建物では、目立った損傷はほとんど見られない。
現行の建築基準法を満たすことに加え、水平構面を検討する長期優良住宅相当の建物であれば、被害を最小限に抑えることが可能と考えられる。
これらの観点に基づいた、耐震補強を早急に行なうことが重要と言える。

最後に

視察時には、被災者と思われる方々がグループで、集落内の各住宅を巡回して様子を見たり声を掛けあったりしている姿が見受けられた。
各種報道にもあったように、共助の仕組みや考え方が浸透していた事で、人的被害の軽減につながったと思われる。

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