木造住宅耐震基準の変遷

建築基準法に見る木造住宅の耐震基準の変遷

1920年
(大正09年)

市街地建築物法施行
日本ではじめての建築法規。
30年後に制定される建築基準法の原型といえる。
木造住宅においては構造基準などが定められる。 耐震規定は少ない。
筋違については、規定なしと思われる。

1924年
(大正13年)

市街地建築物法の大改正
佐野利器が提唱した「設計震度」が採用される。
耐震規定が法規に初めて盛り込まれる。
鉄筋コンクリート造など水平震度0.1以上とする地震力規定が新設される。
木造住宅においては筋違などの耐震規定が新設された。

1950年
(昭和25年)

建築基準法制定
建築基準法が制定された。
これに伴い市街地建築物法は廃止された。
建築基準法施行令に構造基準が定められる。
許容応力度設計が導入される。
木造住宅においては床面積に応じて必要な筋違等を入れる「壁量規定」が定められた。
この時に、床面積あたりの必要壁長さや、軸組の種類・倍率が定義された。
(参照必要壁量の変遷軸組みの種類と倍率の変遷

1959年
(昭和34年)

建築基準法の改正
防火規定が強化された。
木造住宅においては壁量規定が強化された。
床面積あたりの必要壁長さや、軸組の種類・倍率が改定された。
(参照必要壁量の変遷軸組みの種類と倍率の変遷

1971年
(昭和46年)

建築基準法施行令改正
1968年の十勝沖地震を教訓に、鉄筋コンクリート造の柱のせん断補強筋規定が強化された。
木造住宅においては基礎はコンクリート造又は鉄筋コンクリート造の布基礎とすること。
風圧力に対し、見附面積に応じた必要壁量の規定が設けられた。

1981年
(昭和56年)

建築基準法施行令大改正 新耐震設計基準
1978年(昭和53年)の宮城県沖地震後、耐震設計法が抜本的に見直され耐震設計基準が大幅に改正された。
現在の新耐震設計基準が誕生した。
この、新耐震設計基準による建物は、阪神大震災においても被害は少なかったとされている。
これを境に、「1981年昭和56年以前の耐震基準の建物」や「1981年昭和56年以降の新耐震基準による建物」といった表現がされるようになる。
木造住宅においては壁量規定の見直しが行われた。
構造用合板やせっこうボード等の面材を張った壁などが追加された。
床面積あたりの必要壁長さや、軸組の種類・倍率が改定された。
(参照必要壁量の変遷軸組みの種類と倍率の変遷

1987年
(昭和62年)

建築基準法が改正され、準防火地域での木造3階建ての建設が可能となる。
市街地の有効利用を図るため、準防火地域において木造3階建ての住宅の建設が解禁となった。

1995年
(平成07年)

兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
建築基準法改正
接合金物等の奨励

2000年
(平成12年)

建築基準法改正木造住宅においては

  1. 地耐力に応じて基礎を特定。地盤調査が事実上義務化に。(施行令38条)  改正の要点
    • 地耐力に応じた基礎構造が規定され、地耐力の調査が事実上義務化となる。

    • 地耐力20kN未満・・・基礎杭
             20~30kN・・・基礎杭またはベタ基礎
             30kN以上・・・布基礎も可能

  2. 構造材とその場所に応じて継手・仕口の仕様を特定。(施行令第47条 告示1460号)
    改正の要点
    • 筋かいの端部と耐力壁の脇の柱頭・柱脚の仕様が明確になる。

    • 壁倍率の高い壁の端部や出隅などの柱脚ではホールダウン金物が必須になる。

  3. 耐力壁の配置にバランス計算が必要となる。(簡易計算、もしくは偏心率計算 (施行令第46条 告示1352号)
    改正の要点
    • 壁配置の簡易計算(四分割法、壁量充足率・壁率比)、もしくは、偏心率の計算が必要となる。

    • 仕様規定に沿って設計する場合、壁配置の簡易計算を基本とする。

2006年
(平成18年)

改正耐震改修促進法
改正のポイント

  1. 計画的な耐震化の推進
    • 国が基本方針を作成し、地方公共団体は耐震改修促進計画を作成する

  2. 建築物に対する指導等の強化
    • 道路を閉塞させる住宅等への指導・助言を実施

    • 地方公共団体による 学校や老人ホーム等への指示

    • 地方公共団体の指示に従わない特定建築物の公表

    • 倒壊の危険性の高い特定建築物については建築基準法により改修を命令

  3. 支援措置の拡充
    • 耐震改修計画の認定対象に一定の改築を伴う耐震改修工事等を追加

    • 耐震改修支援センターによる耐震改修に係る情報提供等

建築基準法以外での耐震関連の最近の動向一覧

2001年
(平成13年)
9月
国土交通省、既存住宅の倒壊危険性を判別する為の耐震等級評価指針を公表した。
2001年
(平成13年)
10月
品確法性能表示制度スタート 構造において耐震等級が盛り込まれる。
住宅の耐震性能や建設年代に応じて地震保険料を割り引くという制度が10月1日スタート。
2004年
(平成16年)
5月
2004年改訂版「木造住宅の耐震診断と補強方法」発行。
2004年
(平成16年)
12月
政府の中央防災会議が、10年以内に30%程度の確率で起きるといわれる首都直下地震の被害想定を公表。 都内41万棟焼失。
2005年
(平成17年)
2月
国交省が住宅や建築物の耐震化促進を目的とした、「住宅・建築物の地震防災推進会議」を設置。10年で700万戸の耐震化を目指す。
中央防災会議の専門調査会が、首都直下地震による経済被害損失額は112兆円に上るとの被害想定を発表。死者1万3千人、負傷者21万人。被害額は、阪神大震災の10倍。

必要壁量の変遷

必要壁量 昭和25年改正

建築物の種類 平屋 2階建 3階建
1階 2階 1階 2階 3階
屋根および壁の重い建築物 12 16 12 20 16 12
屋根の軽い建築物 8 12 8 16 12 8

必要壁量 昭和34年改正

建築物の種類 平屋 2階建 3階建
1階 2階 1階 2階 3階
屋根および壁の重い建築物 15 24 15 33 24 15
屋根の軽い建築物 12 21 12 30 21 12

必要壁量 昭和56年改正

建築物の種類 平屋 2階建 3階建
1階 2階 1階 2階 3階
屋根および壁の重い建築物 15 33 21 50 39 24
屋根の軽い建築物 11 29 15 46 34 18

軸組みの種類と倍率の変遷

軸組の種類 倍率
S25年改正 S34年改正 S56年改正
土塗壁、裏返しをしないもの 0.5 0.5 0.5
土塗壁、裏返しをしたもの 0.5 1.0 0.5
木ずり壁、片面 0.5 1.5 0.5
木ずり壁、両面 0.5 3.0 1.0
3つ割り筋かい、径12mmの鉄筋筋かい 2.0 1.5 1.5
2つ割り筋かい 3.0 3.0 2.0
柱同寸筋かい 4.0 4.5 3.0
柱同寸筋かいのたすき掛け 8.0 6.0 5.0

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