2012年評点の傾向と2004年評点との比較
一般財団法人日本建築防災協会 発行の、「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」(以下、2012年版)は、2004年に発行された「木造住宅の耐震診断と補強方法」(以下、2004年版)に対する改訂版です。
ホームズ君『耐震診断Pro』は、Ver.4にて2012年改訂版に対応いたします(2012年7月初旬予定)。弊社では、耐震診断ソフトの提供とあわせて、ユーザー様に診断法に関連する情報を提供し、お施主様に十分に納得いただけるような診断業務へとつなげていただきたいと考えております。なお、この分析には、弊社ソフトウェアのモニター制度をご利用された皆様からのデータを活用させていただき評点を算出しました。
これらの診断法で耐震診断を行う方々に、広く参考にしていただきたいと考えています。
>>対応ソフト : ホームズ君「耐震診断Pro」について
分析結果
<分析1>一般診断 新旧評点比較(2012年版 VS 2004年版)
※本グラフは2012年6月20日現在、「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき作成されています。
今後、本書の改訂や修正等があった場合、グラフに変更が生じる可能性があります。
傾向
一般診断の評点は、2012年版は2004年版に比べ、上がる物件もあれば、下がる物件もあります。
※下記の「評点が上がる要因」 「評点が下がる要因」が複合的に影響するため、物件によって、2012年版と2004年版で評点の高低が逆転するものもあれば、しないものもあります。
要因
- 2012年版の評点が低くなる主な要因
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「その他の耐震要素の耐力」がより実状に近くなり、保有耐力が小さくなる傾向にあるため。
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2004年版:必要耐力(Qr)から計算しており、耐力が過剰に算定される場合があった。
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2012年版:有開口壁長または無開口壁率からの計算となり、実状に近い耐力となった。
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「耐力要素の配置による低減」の係数表が変更され、偏心率が0.15以上0.30未満の物件において「耐力要素の配置による低減」が大きくなるため。
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一部の壁材種について、2012年版で2004年版よりも壁基準耐力が下がったため。
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例:木ずり1.1kN/m⇒0.8kN/m
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」の変更に伴い、偏心率が悪化し「耐力要素の配置等による低減」が大きくなる場合があるため。
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- 2012年版の評点が高くなる主な要因
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」が小さくなったため。
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2004年版:最上階用の係数表を用いる。
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2012年版:下屋部分、平屋建て専用の係数表を用いる。(低減が小さくなった)
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「耐力要素の配置による低減」の係数表が変更され、偏心率が0.30以上の物件において、「耐力要素の配置による低減」が小さくなるため。 特に、評点が0.4以上と顕著に上がっている物件については、偏心率による低減が小さくなった影響が最も大きい要因と言える。
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一部の壁材種について、2012年版で2004年版よりも壁基準耐力が上がったため。
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例:(木ずり下地)モルタル塗り1.6kN/m⇒2.2kN/m
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※参考
2012年版においては、2004年版では耐力を考慮できなかった壁材が、考慮できるようになったものがあります。
(例)「ラスボード(厚7mm以上):1.0kN/m」「合板張り(厚3mm以上):0.9kN/m」
従来は、現地調査の結果、上記の壁材が使用されていた場合には「耐力無し」としていました。本分析のグラフで用いているデータでも同様に「耐力無し」としています。(2004年版、2012年版共に)
今後、改めて現地調査結果から診断しなおした場合、これらの耐力を考慮して計算すると、2012年版の評点が上がる要因となります。 -
<分析2>精密診断 新旧評点比較(2012年版 VS 2004年版)
※本グラフは2012年6月20日現在、「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき作成されています。
今後、本書の改訂や修正等があった場合、グラフに変更が生じる可能性があります。
傾向
精密診断の評点は、2012年版は2004年版に比べ、上がる傾向があります。
要因
- 2012年版の評点が高くなる主な要因
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」が小さくなったため。
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2004年版:最上階用の係数表を用いる。
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2012年版:下屋部分、平屋建て専用の係数表を用いる。(低減が小さくなった)
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一部の壁材種について、2012年版で2004年版よりも壁基準耐力が上がったため。
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例:(木ずり下地)モルタル塗り1.6kN/m⇒2.2kN/m
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」の変更に伴い、偏心率が悪化し「耐力要素の配置等による低減」が大きくなる場合があるため。
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- 2012年版の評点が低くなる主な要因
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一部の壁材種について、2012年版で2004年版よりも壁基準耐力が下がったため。
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例:木ずり1.1kN/m⇒0.8kN/m
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」の変更に伴い、偏心率が悪化し「耐力要素の配置による低減」が大きくなる場合があるため。
※参考
2012年版においては、2004年版では耐力を考慮できなかった壁材が、考慮できるようになったものがあります。
(例)「ラスボード(厚7mm以上):1.0kN/m」「合板張り(厚3mm以上):0.9kN/m」
従来は、現地調査の結果、上記の壁材が使用されていた場合には「耐力無し」としていました。本分析のグラフで用いているデータでも同様に「耐力無し」としています。(2004年版、2012年版共に)
今後、改めて現地調査結果から診断しなおした場合、これらの耐力を考慮して計算すると、2012年版の評点が上がる要因となります。 -
<分析3>【2004年版】評点比較(一般診断 VS 精密診断)
※本グラフは2012年6月20日現在、「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき作成されています。
今後、本書の改訂や修正等があった場合、グラフに変更が生じる可能性があります。
傾向
2004年版では、過半数の物件において、一般診断の評点が精密診断に対し高くなります。
要因
- 開口部における耐力の扱いの違いによる影響
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一般診断:開口部における耐力(その他の耐力要素の耐力)を必要耐力の25%としている
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精密診断:開口部ごとに耐力を計算
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- 「耐力要素の配置による低減」の求め方の違いによる影響
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一般診断:偏心率(偏心率0.3以上で大きく低減)
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精密診断:偏心率(一般診断の偏心率とは異なる低減係数表を使用)
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<分析4>【2012年版】評点比較(一般診断 VS 精密診断)
※本グラフは2012年6月20日現在、「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき作成されています。
今後、本書の改訂や修正等があった場合、グラフに変更が生じる可能性があります。
傾向
2012年版では、過半数の物件において、一般診断の評点が精密診断に対して低くなります。
また、精密診断と一般診断の評点の差が、2004年版に比べ、若干小さくなる傾向があります。
要因
- 2012年版の一般診断の評点が(2004年版に比べ)低くなる主な要因
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「その他の耐震要素の耐力」がより実状に近くなり、保有耐力が小さくなる傾向にあるため。
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2004年版:必要耐力(Qr)から計算しており、耐力が過剰に算定される場合があった。
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2012年版:有開口壁長または無開口壁率からの計算となり、実状に近い耐力となった。
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一部の壁材種について、2012年版で2004年版よりも壁基準耐力が下がったため。
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例:木ずり1.1kN/m⇒0.8kN/m
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」の変更に伴い、偏心率が悪化し「耐力要素の配置等による低減」が大きくなる場合があるため。
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- 2012年版の精密診断の評点が(2004年版に比べ)高くなる主な要因
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下屋部分および平屋建ての「柱接合金物による耐力低減」が小さくなったため。
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2004年版:最上階用の係数表を用いる。
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2012年版:下屋部分、平屋建て専用の係数表を用いる。(低減が小さくなった)
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一部の壁材種について、2012年版で2004年版よりも壁基準耐力が上がったため。。
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例:(木ずり下地)モルタル塗り1.6kN/m⇒2.2kN/m
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- 一般診断と精密診断の差について
2012年版の一般診断における次の変更点により、一般診断(精算法)の計算内容が精密診断に近くなり、結果として、評点の差が2004年版と比べ小さくなる傾向がある。
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「その他の耐震要素の耐力」の算定方法の一つ「有開口壁長方式」が精密診断のように、開口壁の耐力を実際の開口壁の長さから計算するため。
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偏心率より「耐力要素の配置による低減係数」を求める際の算定方法について、低減係数の計算方法(表)が精密診断と統一されたため。
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<分析5>【2012年版および2004年版】評点分布(一般診断 VS 精密診断)
※本グラフは2012年6月20日現在、「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき作成されています。
今後、本書の改訂や修正等があった場合、グラフに変更が生じる可能性があります。
傾向
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一般診断と精密診断の評点が等値である事を示す赤い直線に対し、2004年版は直線の周囲に概ね均等に分布しますが、2012年版は赤い直線よりやや上に分布します。
→一般診断の評点が精密診断に対して若干低い傾向にあります。 -
2012年版の分布は、2004年版に比べると、赤い直線付近に集まる傾向にあります。
→2012年版の一般診断と精密診断の評点の差が、2004年版に比べ、小さい傾向にあります。
要因
<分析4>で述べた通り