[H28年基準] 熱貫流率(U値)とは
※熱貫流率を示す記号が、平成21年4月1日に施行された改正省エネ法において、「K」から「U」に変更されました。 これは、熱貫流率を表す記号が国際的には「U」が使用されていることを勘案して、変更が行われたものですが、その意味や内容が変わったものでは一切ありません。
断熱仕様断面イメージ
熱貫流率の計算方法
詳細計算方法は、断面構成の異なる部分を細かく分けて、全ての部分について面積と熱貫流率を求めて計算する方法です。これを簡易にしたのが簡略計算法です。簡略計算法では、胴差と天井ふところの外壁部分を別個に計算する必要がありません。
- 詳細計算方法(面積加重平均)
当該住宅の熱橋部と一般部(断熱部)など断面構成が異なる部分の熱貫流率と見付け面積をそれぞれ拾って面積比率を求め、その平均とするする方法です。断熱の部位、柱間の部位、胴差や桁の部位など、断面構成の異なる部分全てについてそれぞれ求めます。計算に手間がかかり一般的ではありません。 - 簡略計算法―1(面積比率)
各部位の工法毎に決められた熱橋部と一般部(断熱部)の面積比率を用いて計算する方法です。これにより求めた熱貫流率は、断熱仕様が同じ場合に限り、胴差、天井ふところの外壁、土台にも同じ値を用いることができる。長期優良住宅の申請時などで性能評価機関などが推奨されている計算方法です。 - 簡略計算法―2(補正熱貫流率)
簡略計算法―1をさらに簡略化した計算方法です。熱橋部と一般部(断熱部)を区別せず、各部位の断熱工法ごとに決められた補正熱貫流率を求めて計算する方法です。この計算方法は、簡略計算法―1と比べて、安全率を高くみているため、より高い断熱性能が必要になります。
実質熱貫流率U値の計算例
前述の断熱仕様断面イメージについて、 簡略計算法―1(面積比率)を用いて熱貫流率を計算する例を以下に示します。
部分名 | 一般部 | 熱橋部 | |||
---|---|---|---|---|---|
面積比Sn | 0.83 | 0.17 |
(1)
|
||
熱伝導率 (W/mK ) |
厚さd (mm) |
熱抵抗d/λ (m2K/W) |
|||
外壁材(サイディング用) | ※熱抵抗に含まず | ||||
外壁下地材(構造用合板) | 0.160 | 12 | 0.08 | 0.08 | |
断熱材(住宅用グラスウール16K) | 0.045 | 105 | 2.33 | – |
(3)
|
柱・間柱(すぎ) | 0.120 | 105 | – | 0.88 | |
内壁下地材(石こうボード) | 0.220 | 12 | 0.05 | 0.05 | |
外気側表面熱抵抗Ro(m2K/W) | 0.11 | 0.11 |
(2)
|
||
室内側表面熱抵抗Ri(m2K/W) | 0.11 | 0.11 | |||
各部分の熱貫流抵抗Rt Rt=Ro+Ri+Σ(di/λi) | 2.68 | 1.22 | |||
各部分の熱貫流率Ui(W/m2K) Un=1/Rt | 0.37 | 0.82 | |||
平均熱貫流率UA(W/m2K) UA=Σ(Sn×Un)/ΣSn | 0.45 |
(4)
|
|||
熱橋係数βL ※木造住宅は1.00 | 1.00 | ||||
実質熱貫流率U(W/m2K) U=βL×UA | 0.45 |
(5)
|
※壁体内に通気層があり、その場合には、通気層の外側の熱抵抗を含めない。
(1)熱橋面積比
簡略計算法―1では、断熱部、熱橋部等の面積比率として下表に規定された値を使用します。 この表では部位の工法ごとに面積比率が規定されており、実際の柱や間柱の幅、本数などの考慮は不要です。
部位 | 工法の種類等 | 面積比率 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
断熱部 | 断熱部+熱橋部 | 熱橋部 | ||||
床 | 床梁工法 | 根太間に断熱する場合 | 0.80 | – | 0.20 | |
束立大引工法 | 根太間に断熱する場合 | 0.80 | – | 0.20 | ||
大引間に断熱する場合 | 0.85 | – | 0.15 | |||
根太間断熱 +大引間断熱の場合 |
根太間断熱材 +大引間断熱材 |
根太間断熱材 +大引材等 |
根太材 +大引間断熱材 |
根太材 +大引材等 |
||
0.72 | 0.12 | 0.13 | 0.03 | |||
剛床工法 | 0.85 | – | 0.15 | |||
床梁土台同面工法 根太間に断熱する場合 | 0.70 | – | 0.30 | |||
外壁 | 柱・間柱間に断熱する場合 | 0.83 | – | 0.17 | ||
柱・間柱間断熱+付加断熱 | 充填断熱材 +付加断熱材 |
充填断熱材 +付加断熱層内 熱橋部 |
構造部材等※ +付加断熱材 |
構造部材等※ +付加断熱層内 熱橋部 |
||
横下地の場合 | 0.75 | 0.08 | 0.12 | 0.05 | ||
縦下地の場合 | 0.79 | 0.04 | 0.04 | 0.13 | ||
天井 | 桁・梁間に断熱する場合 | 0.87 | – | 0.13 | ||
屋根 | たる木間に断熱する場合 | 0.86 | – | 0.14 | ||
たる木間断熱+付加断熱 横下地の場合 |
たる木間断熱材 +付加断熱材 |
たる木間断熱材 +付加断熱層内 熱橋部 (下地たる木) |
たる木 +付加断熱材 |
たる木 +付加断熱層内 熱橋部 (下地たる木) |
||
0.79 | 0.08 | 0.12 | 0.01 |
※構造部材等とは、柱、間柱、筋かい等のことをいいます。
部位 | 工法の種類等 | 面積比率 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
断熱部 | 断熱部+熱橋部 | 熱橋部 | ||||||||
床 | 根太間に断熱する場合 | 0.87 | – | 0.13 | ||||||
外壁 | たて枠間に断熱する場合 | 0.77 | – | 0.23 | ||||||
たて枠間断熱+付加断熱 | 充填断熱材 +付加断熱材 |
充填断熱材 +付加断熱層内 熱橋部 |
構造部材等※ +付加断熱材 |
まぐさ +付加断熱材 |
構造部材等※ +付加断熱層内 熱橋部 |
まぐさ +付加断熱材 熱橋部 |
||||
横下地の場合 | 0.69 | 0.08 | 0.14 | 0.02 | 0.06 | 0.01 | ||||
縦下地の場合 | 0.76 | 0.01 | – | 0.02 | 0.20 | 0.01 | ||||
屋根 | たる木間に断熱する場合 | 0.86 | – | 0.14 | ||||||
たる木間断熱 +付加断熱 横下地の場合 |
たる木間断熱材 +付加断熱材 |
たる木間断熱材 +付加断熱層内熱橋部 (下地たる木) |
たる木 +付加断熱材 |
たる木 +付加断熱層内熱橋部 (下地たる木) |
||||||
0.79 | 0.08 | 0.12 | 0.01 |
※構造部材等とは、たて枠等のことをいいます。
▼この例では、木造軸組構法における外壁の「柱・間柱間に断熱する場合」に該当するので、構成する部分およびその面積比として、以下の値を使用します。
- 一般部 (断熱部) : 0.83
- 熱橋部 : 0.17
(2)「外気側表面熱抵抗Ro」・「室内側表面熱抵抗Ri」は、下表のように部位によって値が決まります。
部位 | 室内側表面熱抵抗Ri (㎡K/W) |
外気側表面熱抵抗Ro (㎡K/W) |
|
---|---|---|---|
外気の場合 | 外気以外の場合 | ||
屋根 | 0.09 | 0.04 | 0.09 (通気層) |
天井 | 0.09 | – | 0.09 (小屋裏) |
外壁 | 0.11 | 0.04 | 0.11 (通気層) |
床 | 0.15 | 0.04 | 0.15 (床下) |
▼この例では「外壁」部分の断熱仕様であり、また、外気側は通気層があるため、以下の数値を計算に用います。
- 外気側表面熱抵抗Ro : 0.11
- 室内側表面熱抵抗Ri : 0.11
(3)部材
▼以下の式で各部材熱抵抗値を求めます。
熱抵抗値=部材の厚さ÷伝導率
※外壁材部分は計算対象に含まれせん。
壁体内に通気層があり、そこに外気が導入されている場合は、通気層より外側(この例では「外壁材」部分)の熱抵抗は含みません。
(4)平均熱貫流率
▼平均熱貫流率は以下の式で求めます。
平均熱貫流率
=一般の熱貫流量×一般部の熱橋面積比+熱橋部の熱貫流率×熱橋部の熱橋面積比
=0.37×0.83+0.82×0.17
=0.4465≒0.45
(5)実質熱貫流率
▼平均熱貫流率に熱橋係数を乗じた値が実質貫流率(U値)となります。
木造の場合、熱橋係数は1.00であるため平均熱貫流率と実質熱貫流率は等しくなります。
主な部材と熱貫流率(U値)
部材
|
U値(W/㎡・K)
|
---|---|
屋根(天然木材1種、硬質ウレタンフォーム保温板1種等) | 0.54 |
真壁(石こうボード、硬質ウレタンフォーム保温板1種等) | 0.41 |
大壁(合板、グラスウール16K等) | 0.49 |
板床(縁甲板、グラスウール16K等) | 0.41 |
金属製建具:低放射複層ガラス(A6) | 4.07 |