[H28年基準] 住宅省エネルギー技術 設計者講習テキスト
平成28年省エネ基準=「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」(平成28年経済産業省・国土交通省告示第1号)に基づき、大工・工務店の省エネルギーのための適切な技術習得を目的に、全国で講習会が開催されています。
こちらの講習会で使用されているテキストが大変わかりやすいので、特に一次エネルギー消費量基準に関するポイントを紹介します。
以下、「住宅省エネルギー技術設計者講習テキスト(平成28年省エネルギー基準対応)」より、一部転載。
テキスト最新版
最新版が”住宅省エネルギー技術講習会”のWEBサイトで全文を閲覧できます。
平成29年度住宅省エネルギー設計講習会で使用された、省エネ計画、外皮性能計算、一次エネルギー消費量の計算、仕様基準の判定等に関する全国版テキストです。
一次エネルギー消費量とは
一次エネルギー消費量基準とは、暖房、冷房、換気、照明、給湯、その他のエネルギーと、太陽光発電による再生可能エネルギーによる省エネ化を、当該住宅の一次エネルギー消費量(設計一次エネルギー消費量)と基準となる住宅の一次エネルギー消費量(基準一次エネルギー消費量)を比較することで評価します。
各設備の設定
各設備それぞれについて、下記に示す流れにしたがって、属性情報を設定していきます。
- 暖房
- 冷房
- 換気
- 給湯
- 照明
- 発電
各設備の入力に関する説明
これまで設備設計を行ってこなかった方にとっては、聞きなれない言葉がたくさん出てきます。以下に迷いやすい入力項目について、テキストから抜粋して説明していきます。
- ルームエアコンディショナーの消費効率の区分
定格冷房能力の大きさごとに定格冷房エネルギー消費効率の程度を3段階に区分したものです。暖房設備の入力においても、冷房定格能力と定格冷房エネルギー消費効率の数値に基づきます。定格冷房能力 定格冷房エネルギー消費効率による区分 (い) (ろ) (は) 2.2KW 以下 5.13 以上 4.78 以上 ((い)未満) 4.78 未満 2.2kW を超え 2.5KW 以下 4.96 以上 4.62 以上 (同上) 4.62 未滿 2.5kW を超え 2.8kW 以下 4.80 以上 4.47 以上 (同上) 4.47 未滿 2.8kW を超え 3.2KW 以下 4.58 以上 4.27 以上 (同上) 4.27 未満 3.2kW を超え 3.6kW 以下 4.35 以上 4.07 以上 (同上) 4.07 未満 3.6kW を超え 4.0KW 以下 4.13 以上 3.87 以上 (同上) 3.87 未満 4.0kW を超え 4.5kW 以下 3.86 以上 3.62 以上 (同上) 3.62 未滿 4.5kW を超え 5.0KW 以下 3.58 以上 3.36 以上 (同上) 3.36 未滿 5.0kW を超え 5.6kW 以下 3.25 以上 3.06 以上 (同上) 3.06 未満 5.6kW を超え 6.3kW 以下 2.86 以上 2.71 以上 (同上) 2.71 未満 - 床暖房の上面放射率
上面放熱率とは、床暖房パネルに投入した熱量に対する居室(上部)に放熱される熱量の割合で、下記の式で計算します。↑上の画像差し替え(一番上の画像の部分のみ切り抜き)
上面放熱量= (1-H)×(Rsi+RU)+(RP+RD+Rse) Rsi+RU+RP+RD+Rse
Rsi : 床上側表面熱伝導抵抗 [m2K/W]
RU : 床暖房パネル内の発熱体から床仕上げ材上側表面までの熱抵抗 [m2K/W]
RP : 床暖房パネル内の発熱体から床パネル床下側表面までの熱抵抗 [m2K/W]
RD : 床暖房パネルの下端から床下側表面までの熱抵抗 [m2K/W]
Rse : 床下側表面熱伝導抵抗 [m2K/W]
H : 温度差係数表4.3.1.13 温度差係数 H=1.0 外気に接する床の場合 H=0.7 外気に通じる床下に接する床の場合 H=0.15 4~7地域で、2階床などで下階が居間等の熱的境界内である床の場合 H=0.05 1~3地域で、2階床などで下階が居間等の熱的境界内である床の場合 - 換気設備の比消費電力について
換気設備の省エネルギー対策の効果を比消費電力(設計風量当たりの換気設備の消費電力)で表します。比消費電力は、計算、またはカタログ値を元に入力します。比消費電力= 全般換気設備の消費電力 [W] 全般換気設備の設計風量 [m3/h]
図4.3.1.16 カタログ表示の例 品番 消費電力 (W) 有効換気風量
(m2/h)比消費電力
W/(m2/h)50Hz 60Hz 50Hz 60Hz 50Hz 60Hz ABC-DEF-1 7.5 8 19 20 0.39 0.40 ABC-DEF-1 6.5 6.5 16 16 0.41 0.41 ABC-DEF-1 6 6 13.5 13.5 0.44 0.44 ABC-DEF-1 3.5 4 16 16 0.22 0.25 ABC-DEF-1 4.4 4.8 19 19 0.23 0.25 カタログ等から読み取るか、もしくは仕様により以下の数値を用いることができます。
表4.3.1.16 換気設備の比消費電力等 全般換気設備の種類 基本となる
比消費電力
(A)省エネ対策
の効果率
(B)比消費電力 ダクトの内径 電動機の種類 ダクト式第一種換気設備
(熱交換あり)内径75mm以上の
ダクトのみ使用直流 0.70 0.455 A×B 交流、または
直流と交流の併用0.700 上記以外 直流あるいは交流 1.000 ダクト式第一種換気設備
(熱交換なし)内径75mm 以上
のダクトのみ使用直流 0.50 0.455 交流、または
直流と交流の併用0.700 上記以外 直流あるいは交流 1.000 ダクト式第二種換気設備
または
ダクト式第三種換気設備内径75mm以上
のダクトのみ使用直流 0.40 0.36 交流、または
直流と交流の併用0.600 上記以外 直流あるいは交流 1.000 壁付け式第一種換気設備 (熱交換あり) 0.70 壁付け式第一種換気設備 (熱交換なし) 0.40 壁付け式第二種換気設備 0.30 壁付け式第三種換気設備 0.30 - 換気設備の有効換気量率について
有効換気量とは、環境衛生上支障のない状態で、有効に室内に供給される外気量のことで、有効換気量率とは、第一種換気設備において、有効換気量の給気量に対する比率のことです。 - 換気設備の換気回数について
換気回数とは、換気量を換気対象の空間の気積で除した値です。その空間の空気が1時間に何回入れ替わるかを示します(回/時)。
建築基準法では、使用する建材等に応じて規定の換気回数を確保することが義務付けられていますが、一般的な住宅であれば0.5回の換気回数で設計しているケースが大多数となります。 - 熱交換設備の有効換気量率と温度交換効率について
有効換気量率はJRA 4056-2006により、温度交換効率はJIS B8628により、それぞれ計測された値であり、カタログ等により確認してください。 - 給湯設備のふろ機能について
ふろ機能については、下記より選択します。ふろ機能の条件 湯張り時 沸かしなおし時 給油単機能 水栓から湯張り 水栓から差し湯 ふろ給湯機(追焚なし) 自動湯張り 水栓から差し湯 ふろ給湯機(追焚あり) 自動湯張り 追焚(自動保温等) - 給湯設備の配管方式について
先分岐方式とは、給湯熱源機から各給湯先までの給湯配管が先分岐式の仕様のことです。
ヘッダー方式とは、給湯熱源機から給湯ヘッダーを介して各給湯先まで配管する仕様のことです。 - 給湯設備の水栓方式について
2バルブ水栓か、2バルブ水洗以外のその他の水栓であるかを選択し、後者では節湯方式についても選択してください。
2バルブ水洗以外のその他の水栓とは、サーモスタット湯水混合水栓、ミキシング湯水混合水栓、またはシングルレバー湯水混合水栓です。 - 太陽熱給湯の太陽熱温水器とソーラーシステムについて
太陽熱温水器とは、集熱部と貯湯部との間の熱輸送に自然循環作用を利用する自然循環形温水器と、集熱部と貯湯部とが一体となったくみ置形温水器のことです。ソーラーシステムとは、集熱媒体を強制循環する太陽集熱器と、蓄熱媒体により熱エネルギーを顕熱として貯蔵する太陽蓄熱槽を組み合わせた機器のことです。