[性能比較] UA値とQ値の相関及びQ値換算式の検証
外皮性能の指標については、平成25年の改正において、Q値(熱損失係数)からUA値(外皮平均熱貫流率)に切り替わりましたが、Q値への馴染みやそれぞれの指標値の特性から、設計現場では依然Q値を参考にしたいという要望が強くあります。
そこで、多様な面積・形状の物件によるUA値とQ値の相関分析と、これらから求められる近似式(UA値よりQ値を求める換算式)の妥当性と利用時の注意点について整理しました。
確認項目
本レポートにおける用語の定義については下記の通りといたします。
[基準UA値] | H28年省エネ基準に基づき算出されたUA値 (ホームズ君「省エネ診断エキスパート」で算出) |
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[基準Q値] | H11年省エネ基準に基づき算出されたQ値 (ホームズ君「省エネ診断エキスパート」で算出) |
[換算Q値] | [基準UA値]と[基準Q値] から導出した近似式を換算式として用い算出したQ値 |
換算式 | [基準UA値]と[基準Q値] から導出した近似式 |
検証データについて
木造住宅実物件34件、机上プラン4件、合計38件の平面プランに対して、5つの断熱仕様を想定してUA値およびQ値を算定しました。検証データは総数190件を準備しました。
なお、実物件は100m2以下の物件が少ないため、机上プランを加えました。
結果
分析1
全物件の相関から導出した換算式
[換算Q値] = 2.58 × [基準UA値] + 0.3916
[基準Q値]と[換算Q値]の差を確認すると、差異が1.0以上の物件が2件、0.5以上の差異のある物件が26件(全体の13.7%)ありました。特に差異の大きな物件を確認したところ、延床面積が比較的小さいグループ、および、比較的大きいグループ、形状が複雑な建物であることがわかりました。Q値とUA値は熱損失量を床面積で除するか、外皮表面積で除するかの違いがありますが、これが影響した傾向であると考えられます。
分析2
延床面積 | |
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100平米未満 | [換算Q値] = 2.8592 × [基準UA値] + 0.4569 |
100~160平米未満 | [換算Q値] = 2.5409 × [基準UA値] + 0.4345 |
160平米以上 | [換算Q値] = 2.2999 × [基準UA値] + 0.5436 |
延床面積ごとに導出された近似式を換算式として求めた[換算Q値]と[基準Q値]との差を確認したところ、全物件に対して1つの換算式を用いた場合に比べ、差異は小さくなりました。差異が0.5 以上の物件が18件(全体の9.5%)となりましたが、それでも建物形状が複雑な場合では大きな差異のでる物件が見られました。
まとめ
全物件の決定係数R2が0.92に対し、延床面積別にグループ化した場合、100m2以下では0.99となり、より相関が強くなり、延床面積別近似式を用いた[換算Q値]では、[基準Q値]との差異を小さく抑えられます。
したがって、100m2以下の建物においては、建物形状が比較的シンプルな物件が多いため、[換算Q値]も参考値として十分に有効であると考えられます。
一方、100m2超の建物においては、平面・立面的に複雑な物件も多くなってくるため、[換算Q値]と[基準Q値]との差異(誤差)が大きくなるケースがありました。(延床面積別換算式において最大で差異が0.97、平均で0.26程度発生)
したがって、換算式を用いて求めた[換算Q値]は、概算であることを理解したうえで、活用すべきと考えられます。
※ホームズ君「省エネ診断エキスパート」では、省エネ基準で示される計算方法による[基準UA値]と[基準Q値]の両方の値を画面上で確認できます。