[性能比較] UA値の比較 簡易計算ルートvs詳細計算ルート
省エネルギー基準(エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準)の外皮性能の判定については、平成28年に簡易計算ルートが追加され、下記の3つになりました。
- 仕様ルート(仕様規定)
- 簡易計算ルート
- 詳細計算ルート(性能規定)
計算ルート | 概要 | 面積拾い | U値・η値 | 精度 |
---|---|---|---|---|
① 仕様ルート (仕様規定) |
目的の性能を達成できると定められた部材を採用する方法 | 問わない | 照合のみする | C☆ |
② 簡易計算ルート | 目的の性能をUA値、ηAC値で達成できることを簡易な計算で確認する方法 | しない | 部位ごとに求める | C☆ |
③ 詳細計算ルート※ (性能規定) |
省エネ基準書のU値、η値を用いて各部位を面積を拾い計算で確認する方法 | する | 〃 | A☆ |
カタログやWindEyeのU値、η値を用いて、各部位を面積を拾い計算で確認する方法 | する | 〃 | AA☆☆ |
※ホームズ君製品は③詳細計算ルートに対応しています
本レポートでは、②簡易計算ルートと、省エネ基準書のU値・η値を用いた③詳細計算ルートの計算結果の差異を比較し、利用時の注意点について整理しました。
確認事項
本レポートにおける用語の定義については下記の通りといたします。
[詳細UA値] | H28年省エネ基準に基づき、詳細計算ルート(面積拾いあり)で算出されたUA値 ホームズ君「省エネ診断エキスパート」で算出 |
---|---|
[簡易UA値] | H28年省エネ基準に基づき、簡易計算ルート(面積拾いなし)で算出されたUA値 国立研究開発法人建築研究所提供EXCELプログラムで算出 |
検証データについて
木造住宅実物件34件、机上プラン4件、合計38件の平面プランに対して、5つの断熱仕様を想定してUA値およびQ値を算定しました。検証データは総数190件を準備しました。
なお、実物件は100m2以下の物件が少ないため、机上プランを加えました。
結果
-
簡易UA値は、精緻である詳細UAと比較して、大きな値になる(=悪くなる)傾向がある。
-
全190件中73件(38%)の物件で簡易UAと詳細UAで0.1以上の差異がある。
-
全190件中152件(80%)の物件は、簡易UAが詳細UAより大きく(=悪く)なっており、そのうち差異が0.2以上乖離するものが12件あった。
まとめ
②簡易計算ルートと③詳細計算ルートで求められるUA値を比較したところ、[簡易UA値]が[詳細UA値]より大きく(悪く)なるものが全体の約80%あり、小さく(良く)なるものが20%ありました。
これは[簡易UA値]では熱損失量を[詳細UA値]より大きく評価しているといえ、低断熱レベルの住宅の設計では安全側とはいえます。
これをいい換えると、 [簡易UA値] で目標達成しているときに [詳細UA値] は設計目標以上によくなっているということであり、それは目標以上に熱が逃げない性能になっているということです。
つまり、超高断熱住宅においては、熱の逃げだけに着目するのではなく、熱の侵入や発生、すなわち日射遮蔽措置や内部発熱を十分に検討しないとオーバーヒートや冷房負荷増の要因になる危険性があるということでもあります。
以上より、②簡易計算ルートは概算であることを十分に理解したうえで利用すべきだといえます。特に高断熱住宅やパッシブ設計を行う際は[簡易UA値]の利用は控え、 [詳細UA値]を用いるべきだと考えられます。